人口も少ない、取り分け田舎とも言えるフェルメイリーは、自然に囲まれた美しい街である。
しかし、そんな表面的な外観とは裏腹に、親のいない孤児が増えて行く街でもあった。
と言うのも、フェルメイリーは国を挙げた未成年保護代表区の一つなのだ。
国の影の末端を落とす場所、それが田舎町であるフェルメイリーだった訳だ。
その為に全国から孤児保護の要請が掛かる。
年々増加の一途を辿る孤児の数はフェルメイリーだけで150人を超えていた。
それ程、大きく建設されてもいない施設はパンク寸前だった。
それに伴いいつからか施設内は逼迫して行き、一つ一つの設備が疎略なものになっていた。
手の平が悴み、体温の存在が不確かに感じる。
当てた吐息の湿度がすぐに冷たくなり肌が熱を忘れる。
一人一枚ずつ配布されている毛布は、冬を凌ぐには余りに粗末な物で、体全体をそれで包んでも背
中がガタガタと震えるくらいだった。
施設側も、突然訪れた15年振りの冬に十分な用意がある筈も無く、古着の洋服等が一着ずつ配布
されるくらいだった。
ヴェネは肩ぐらいの高さにある窓から、レンガの分厚い塀とその上に張り巡らされた有刺鉄線の先
に見える、街並みを覗き見ていた。
日差しが、路上の上を山吹色に篭っている。
寒さを優しく彩る様に照り輝いている。
休日なのか子供達が噴水の側を無邪気にはしゃいでいる。
そのすぐ向こうにはベーカリーがある。
しっかりとは見えないが店主は白髭面の太ったおじさんだ。
今に焼きたてのクロワッサンの匂りが漂って来そうに思うほど何度も見ている。
隣にはバス停があって、月水金と日曜日の午前11時頃の一回だけ赤茶けたバスが来る。
一度でいいから乗ってみたいとずっと思っている。
爪先立ちで見渡すフェルメイリーの街並みはヴェネにとって壁一枚先の憧れだった。
移り変わり行く情景を求める瞳は、こんな環境の中で深い青と煌く。
家々の屋根の向こうに僅かながらもはっきりと見える大木、その向こう側がこの街の出口なのだ。
それだけははっきりと覚えていた。
今年で11歳を迎えるヴェネは今まで一度だって、昼食後の午後の街並みをふと散歩したり、川原
の岩に座り込んでゆったりと魚釣りをしたこともない。
ヴェネは産まれてすぐ孤児だった。
施設を盥回しに移り、いつしかフェルメイリーに来ていたのだ。
馬車の荷台の様な運搬車に揺られながら、7歳で初めてフェルメイリーに来た時最初に窓越しから
見たバーバ。
あの向こうに行けばきっと自由になれるのだと、思っていた。
ヴェネが悴む爪先を脛で擦りながら思いを馳せる中、「ジリリリリー!」と大きくベルが鳴った。
昼食の時間だ。
疲れちゃった。
次回に続きます。
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